【ビリルビン】血液検査で総ビリルビン数値が高いと何が問題?

肝疾患・肝機能障害、胆道の異常が起こると数値が上昇する検査項目に、「ビリルビン」があります。

ビリルビンは赤血球と関係が深い黄色の色素なのですが、この時点で「あ」と思った人もいると思います。

肝疾患などで黄疸(おうだん)を発症する際に、白眼や皮膚組織の一部が黄色く変色するのは、このビリルビンという物質が原因です。

今回は「ビリルビン」をテーマとしてお話しします。

ビリルビンとは?黄色い色素について知ろう

ビリルビンという物質には2種類あって、それぞれ

  • 間接型ビリルビン
  • 直接型ビリルビン

と呼ばれる種類に分類されます。成分自体が異なるので、両者は特徴が異なる別の物質と考えられます。

間接型ビリルビンのことを「非抱合(ほうごう)型ビリルビン」、直接型ビリルビンを「抱合型ビリルビン」と呼ぶこともあります。

間接型ビリルビンと直接型ビリルビンを合わせて「総ビリルビン」と呼びます。

間接型ビリルビンがつくられるプロセスは?

赤血球も細胞なので、供給するための酸素を運んだり排出するための二酸化炭素を運んだりといった活躍を終え、いずれ滅びます。この赤血球細胞が滅び、細胞が破壊される際に、赤い色素のヘモグロビンが分解されます。

赤血球細胞の破壊によってヘモグロビンが分解されたものがそれぞれ「ヘム」、「グロビン」と呼ばれる物質で、ヘムのほうが酵素と結びついてできるのが、ビリルビンという物質です。

脾臓(ひぞう)で遂行されるこのプロセスで生成されるビリルビンを、間接型(非抱合型)ビリルビンと呼びます。

直接型ビリルビンがつくられるプロセスは?

結論からいうと、間接的ビリルビンは肝臓で抱合酵素と呼ばれる酵素と結びついて、直接型(抱合型)ビリルビンとして生まれ変わります。この2種類のビリルビンが総ビリルビンになるわけですが、1つ疑問が生じますよね?

それは、「なぜそんなめんどうなプロセスを踏まえて直接型ビリルビンをつくる必要があるの?」という素朴な疑問かと思います。実は、間接型ビリルビンは毒素の一種なんです。

毒素がそのままではまずいことになります。めんどうでも、何らかの対処が必要になります。それにそもそも私たちの身体はそんなマヌケな構造ではありません。

毒素はできるだけ早く無毒化する必要があります。これが「何らかの対処」です。そして、毒素の無毒化といえば、「肝臓」の重要な役割のひとつでしたよね。

肝機能の中でも最重要な機能の1つである「解毒」がここでも威力を発揮し、毒素である間接型ビリルビンは直接型ビリルビンに生まれ変わるのです。このことを「ビリルビン代謝」と呼びます。

肝臓は、アルコールが分解された毒素であるアセトアルデヒドを無毒の酢酸へと代謝する「アセトアルデヒド代謝(アルコール代謝)」で知られる臓器ですが、ビリルビン代謝も原理としてはまったく同じです。

ビリルビン代謝の流れ
  1. 赤血球細胞が破壊されてヘモグロビンの分解が起こり、ヘムが生じる
  2. ヘムと酵素が結びついて間接型(非抱合型)ビリルビンが生成される
  3. 間接型ビリルビンが肝臓に入り、直接型ビリルビンに代謝される

肝臓でつくられた直接型ビリルビンは、不要なものを腎臓でこし出されて尿として体外に排出されます。一部は便としても排出されます。

ビリルビンの「間接型」と「直接型」の合計が「総ビリルビン」ということになるわけですが、臓器異常のマーカーとしては、総ビリルビンと直接型ビリルビンの数値を調べることが多いです。

間接型ビリルビンに異常があったとしても、総ビリルビンと直接型ビリルビンの数値がわかれば、その引き算が間接型ビリルビンの数値であるとわかるからです。

検査方法としてはこれで問題ありませんが、当然それぞれのビリルビンの正常範囲がわかっていなければなりませんよね。

ビリルビンの正常範囲と異常の原因、そして異常時の問題は?

総ビリルビン、直接型、間接型のビリルビンにも正常範囲が設定されています。異常が起こっているということは、そこに何らかの原因があり、何らかの問題が生じるリスクとなります。

各ビリルビン値の正常範囲を知る

では、それぞれのビリルビン値の正常範囲をご紹介します。検査方法によってはもちろん、医療機関によっても「正常」の解釈が異なることがあります。

各ビリルビン値の正常範囲
  • 間接型ビリルビン・・・0.8mg/dL以下
  • 直接型ビリルビン・・・0.4mg/dL以下
  • 総ビリルビン…0.2~1.2mg/dL

ビリルビン値に問題があると何が起こる?

血液検査で判明する数値の多くは、疾患のマーカー(トラブルが起こっている部位や程度を知るための具体的な手がかりや根拠)として活用されます。ビリルビン値もその典型です。

そのため、ビリルビン値が上昇したら何か悪いことが起こるのはもちろんなのですが、ビリルビン値の異常自体がその原因になっているわけではありません。

何らかの原因で何らかのトラブルが起こり、そのトラブルが原因でさまざまな症状が現れることになるわけですが、そのプロセスのどこかでビリルビン値に異常がみられるのです。

つまり、疾患が原因でビリルビン値に異常が見られ、その後起こるさまざまな症状の原因も、その疾患であるということになります。

ビリルビン値以上の種類 考えられる原因(疾患)
間接型ビリルビン、総ビリルビンの異常 溶血性貧血、肺梗塞、敗血症、甲状腺機能低下症
直接型ビリルビン、総ビリルビンの異常 胆管・胆道系における閉塞(胆汁うっ滞)
直接型ビリルビンの異常、総ビリルビンは正常(中間型高ビリルビン血症) 急性肝炎、慢性肝炎、肝硬変などの肝細胞異常

特に直接型ビリルビンが高値になると、白眼や皮膚組織に黄疸が見られることが多くなります。黄疸の黄色っぽく見える症状は、ビリルビンの黄色色素によるものです。

また、何らかの原因によって溶血(赤血球の細胞破壊)が異常発生する場合には、間接型ビリルビン値が高値を示し、肝臓でのビリルビン代謝が間に合わずに黄疸が現れることがあります。

黄疸が起こったら、肝細胞や赤血球に重大な異常が起こっている可能性が高いことがお分かりいただけたかと思います。黄疸が見られたら、すぐに病院で詳細な検査、治療など、対処していただきたいと思います。

余談ですが、黄疸は手足に見られることもあります。ただ、手足の黄疸に似た症状の「柑皮症(かんぴしょう)」は、黄疸とは異なります。みかんをはじめ、カロテンを過剰に摂取しすぎると柑皮症が現れることがあります。

柑皮症と黄疸の見た目上の決定的なちがいは、「白眼の症状の有無」です。白眼に症状が現れるのが黄疸、現れないのが柑皮症です。黄疸ほどではないものの、柑皮症もやや病気のリスクが高い皮膚トラブルです。

柑皮症は、肝機能やビリルビンとは直接関係がない皮膚トラブルです。

黄疸が現れたら要注意!すみやかに医療機関へ!

ビリルビン値は、確かに血液検査をすれば誰でも簡単に把握できる数値かもしれませんが、血液検査は毎日するわけではありません。反面、ビリルビンの異常による黄疸の発症は、タイミングを選びません。

つまりビリルビンの異常は、自覚しやすい症状であるともいえるのです。血液検査の結果をこまめにチェックすることは重要です。ただ、自覚症状を見逃さないことはもっと重要です。

血液検査の目的は、「疾患の疑い」をかけることにあります。しかし、自覚症状が出ているときには「明らかな疾患がある」ことを示しています。この部分は勘違いすべきではありません。

注意して、警戒・対処していただきたいと思います。

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