便秘で肝臓が悪くなる!特に便秘に注意すべき人の特徴とは

肝臓が悪くなってしまう原因はいろいろあります。逆に、どこかが悪くなる原因となっているのが肝機能障害だったというケースも多いです。

肝臓は「化学工場」と呼ばれることがあるくらい、さまざまな栄養素を扱う臓器です。心臓が「血液循環の司令塔」なら、肝臓は「栄養循環の司令塔」といっても過言ではありません。そんな臓器だけに、循環が滞るトラブルは大きな問題になります。

「便秘」も当然その1つです。

便秘が原因で肝臓が悪くなる…?その関係について、簡単に解説いたします。

便秘が肝機能を低下させる原因に!有害物質が肝臓に運ばれてしまう

肝臓の主な役割は「代謝・解毒・胆汁の生成・貯蔵」などに分類されます。いずれも私たちの健康に大きくかかわる機能です。

これらの肝機能がどれも健全であって、はじめて私たちの健康は成り立つと考えるべきなのです。肝臓って本当に大事なんですよ。

そして、特に女性にとって悩ましい「便秘」が肝臓への負担となる可能性が高いことがわかっています。

中でも便秘によって深刻な問題となりうるのが「解毒」です。「げどく」と読みますが、主に小腸から運ばれてきたさまざまな毒素を無毒化することが、主要な肝機能である解毒の意味するところになります。

便秘によって逆流してきたアンモニアを肝臓は解毒しきれなくなる

便秘をすると、なぜ肝臓の機能の1つ「解毒」に問題が起こるのか、少々不思議な印象もあります。確かに、排泄(はいせつ)は広義の解毒です。つまり、肝臓で完全に解毒されない老廃物を身体から出すことで無毒化するという意味が、排泄には含まれます。

排泄されるべき有毒な物質が排泄されないままお腹のなかにため込まれてしまうのが便秘という胃腸系のトラブルですから、肝臓との関係をどうこうする以前に、便秘が身体にとってプラスに働くことなど何ひとつありません。

とはいえ、なぜ肝臓の、しかも「解毒」により大きな影響がおよぶのかという理由は、簡単には思い浮かばないというのが正直なところかと思います。この謎を解き明かしていきましょう。

便秘が肝臓に対して悪影響をおよぼす理由
本来体外に排出される有害物質(アンモニアなど)が逆流する形で肝臓に運ばれ、肝臓に負担をかけるから

肝臓の解毒機能が低下する原因としてよく知られるのが「飲酒」です。血中のアルコールは、アルコール脱水素酵素によって有毒のアセトアルデヒドに代謝され、さらにアセトアルデヒド脱水素酵素によって無毒の酢酸に代謝され、解毒されます。

ところが、飲酒量が過剰だったりそもそも肝臓の代謝能力がそれほど高くない人だったりすると、アセトアルデヒドの代謝が間に合わなくなり、その毒性が肝臓にダメージを負わせるのです。

実は、アルコール以外の食べ物を食べたときにもアセトアルデヒドによる悪影響と同じような悪影響がおよぶことがあるのです。このときの主な有毒物質は、アセトアルデヒドではなく「アンモニア」です。

ただし、血中の特定物質が肝臓で代謝されてアンモニアができるわけではなく、主に消化管(腸壁など)でアミノ酸が細菌によって分解されてアンモニアが生成されるという点では大きなちがいがあります。

しかしアンモニアをはじめとした有毒物質を解毒するのは本来肝臓の得意とするところです。肝臓に運ばれてきたアンモニアは、それが健康な肝臓であれば無事に代謝され、水に溶けやすい「尿素」となって解毒されます。

ところが、便秘によって逆流してきたアンモニアへの対処は、いくらマルチな才能がある肝臓といえども、残念ながら得意とはいえないのです。肝硬変など重度肝疾患の人が便秘をするとほんとうにたいへんです。

肝臓の問題が特にない人であれば、便秘によってすぐどこかに問題が起こるということもありません(とはいえ慢性的な便秘はできるだけはやく解消したいところではあります)。問題は、大なり小なり肝疾患を持っている患者さんの便秘なんです。

要注意!肝疾患がある人の便秘は特に深刻!

重篤な肝疾患ではなくても、いわゆる脂肪肝の人が便秘をすると、肝臓の状況はますます悪化への道をたどる危険があります。そもそも脂肪肝の時点で肝機能が低下している可能性が高いです。

そうした状況で便秘によるアンモニアの逆流などが起こると、肝臓への負担はさらに大きくなります。脂肪肝は慢性肝炎や肝硬変、さらには肝がんへのリスクを高めるので、そんな招くべきではないリスクを便秘により増大させないことが大切です。

そして特に問題となるのが、前の項でも少し触れたような、肝硬変など重度肝疾患がある患者さんの便秘です。肝硬変ともなると、肝機能は著しく低下している可能性が高いです。アンモニア代謝もままならない状況です。

そうした中で便秘によるアンモニアの逆流が起こったりすると、「肝性脳症」という怖い脳障害を併発するリスクが高まります。

肝臓で十分に代謝されないアンモニアおよびその他の有害物質が血中を運ばれて脳に至ることで、肝性脳症を発症します。肝性脳症の初期は自覚症状に乏しいため進行しやすく、重度肝障害の人は便秘の有無にかかわらず警戒すべき症状です。

肝硬変自体が生命のリスクを大きくする重度肝障害ですが、肝性脳症を発症するとそのリスクはますます大きくなるといわなければなりません。

なお、肝臓以外にも、腎障害がアンモニアによるさまざまな問題の原因となることもありますので、やっぱり肝臓や腎臓は大切な臓器であることがわかりますね。

肝臓の健康は自身の健康に直結する!便秘の対策をしよう

肝臓云々を考える前に、便秘自体が身体にとってマイナスになるトラブルです。便秘に悩む人は、さまざまな対策を講じて便秘からの脱却をはかる必要があります。しかし特に大切なのは、肝疾患にかかっている人です。

できるだけ食物繊維やビタミンを豊富に摂取し、(肝疾患が重度でない人は)可能な限り運動習慣を生活に組み込み、規則正しい生活を送って便秘を予防・改善していただきたいと思います。

また、お酒の飲みすぎで下痢気味になった経験をお持ちの方も多いと思いますが、だからといってお酒をたくさん飲めば便秘解消の手がかりになるという考え方は安易です。

アルコールが便秘解消の効果を示すなどという医学的根拠はどこにもありませんので、特にお酒好きな人で便秘に悩む人は、あまり自由に解釈しすぎないよう注意しましょう。

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