B型肝炎の予防接種。接種のタイミングや特に必要な人の特徴とは

肝炎は肝細胞が破壊されて肝臓が炎症を起こす肝臓病ですから、肝炎自体重大な疾患です。ただ、より大きな問題となるのは、肝炎にかかるとさらなる重大な肝臓病へと移行する危険性が増加するという点です。

たとえば肝硬変や肝がんといった、生命の危険をダイレクトに脅かす重大な肝臓病の原因が肝炎であったという事例は多いです。

よく知られるB型肝炎もその原因因子です。だからこそ、B型肝炎の予防接種が重要な意味を持ちます。

B型肝炎の予防接種を受ける時期や受けた方がいい人とは

B型肝炎は、肝炎を起こす肝臓の病気ですが、実際には肝炎ウイルスと呼ばれるウイルスが感染して起こる感染症です。

ほかにもA型肝炎、C型肝炎と呼ばれる感染症がありますが、いずれも肝炎ウイルスによる感染症です。

肝炎ウイルスが感染して起こる肝炎のことをウイルス性肝炎と呼びます。当然B型肝炎も代表的なウイルス性肝炎です。

ウイルス性肝炎には、ワクチンを接種して感染の影響を最小限にとどめる目的の予防接種があります。

B型肝炎予防接種のタイミングはなるべく早い方がいい

B型肝炎ワクチンは、「HBワクチン」と呼ばれます。このワクチンを接種することによって、B型肝炎ウイルス(HBV)による感染症(肝炎や肝がんなど)を予防することができると考えられています。

HBワクチンは、一般的な予防接種と同じく皮下注射を実施しますが、その摂取量は年齢などの条件ごとに、0.25mg~0.5mgまでの幅があります。

現在世界中の180か国以上でHBワクチン接種の実績があります。

つまりB型肝炎の予防接種はそれだけ安全であることを裏付けています。

日本でも、妊娠を予定している女性や乳幼児をはじめとする多くの人がHBワクチンを接種しています。

B型肝炎の予防接種を実施するタイミングも重要です。

たとえば乳幼児期に3回のHBワクチン接種を実施した場合には、100%に近い確率でHBs抗体(HBVに対する免疫)を獲得できます。

この場合、免疫の持続時間は「15年」ということで、いろいろあるワクチンの中でも平均的な効力持続であるといえます。

なお、20代までにHBワクチン接種を実施すれば高い確率で免疫を獲得できます。

とはいえ、HBV感染による影響は、成人してから(年齢を重ねるごとに)危険度が著しく軽減される特徴があることから、できるだけ早いタイミングで予防接種を実施することが望ましいと考えられます。

逆に40代以降にはじめてHBワクチン接種を実施した場合には、HBs抗体を獲得できる確率は80%前後にまで低下します。このことからも、HBワクチンはできるだけ早く実施することで有効性が高まるといえるのです。

B型肝炎予防接種を受けたほうがいいの?予防接種が推奨される人の特徴

B型肝炎の予防接種は、皮下注射によって実施されますので、小さいとはいえ「痛み」を伴います。言い換えれば「注射という恐怖心」を伴うということです。

当然お金もかかりますし、時間も必要です。

どんな予防接種、どんなワクチンでも原則的には同じですが、B型肝炎の予防接種を実施するということは、そうした物理的、精神的、肉体的なデメリットが生じることを意味しますね。

しかしB型肝炎の予防接種をすべての人が受けなければならないわけではありません。実際国がHBワクチン接種を義務付けているわけではなく、筆者も受けたことはありません。

ただ、「B型肝炎の予防接種を受けたほうがよい人」がいることも事実です。

B型肝炎は生命を脅かす怖い感染症ですから、受けたほうがよいと考えられる人は、できるだけ積極的に受けていただきたいと思います。

B型肝炎の予防接種を受けたほうがよい人
  1. HBV感染経験があるお母さんが出産した赤ちゃん
  2. 特に感染症病棟の医療従事者など、患者さんの血液や体液と接触する可能性が高い人
  3. ご家族にHBV感染経験がある方がいて、ご自身が人工透析など特殊な治療を行っている人

(参考:B型肝炎ワクチンの接種を受けた方がいい人は?-B型肝炎・初めての’B型肝炎ワクチン'(一般財団法人日本肝臓学会)より)

1の「HBV感染経験があるお母さんが出産した赤ちゃん」では、B型肝炎ウイルスの感染経験がある、と表現しましたがいわゆる不顕性感染を指します。

「無症候性キャリア」など似た感染がいくつかありますので、用語の詳細はこちらの記事、「B型肝炎ウイルスキャリアとは。わかりやすいB型肝炎の用語解説」でご確認ください。

1の「HBV感染経験があるお母さんが出産した赤ちゃん」については、HBワクチン3回と、HBIG(免疫グロブリン製剤)2回の接種を行うことが推奨されますが、いずれも健康保険の適用範囲内なので、赤ちゃんの将来のためにもぜひ接種していただきたいと思います。

2の「特に感染症病棟の医療従事者など、患者さんの血液や体液と接触する可能性が高い人」については、原則的に医療機関ごとにワクチン接種が行われるはずですから、個々に注意すべきことはほぼないでしょう。

ただし、医療従事者以外にも、消防や警察関係者が必要になることはありえます。

命を守るB型肝炎予防接種。今後は国から摂取

命に重さはないといいますが、やはり生まれてきた赤ちゃんが生命の危機に瀕するような病気にかかってしまうという不幸は、できることなら起こってほしくないことです。

HBワクチンは大切な命を守る予防接種です。

上でも触れたとおり、日本ではHBワクチン接種が義務付けられていません。しかし世界的な基準でいえば、HBワクチン接種を実施している180か国のうち、実に90%の国で国民全員がHBワクチンを接種しています。

国民全員がワクチンを接種する取り組みを「ユニバーサルワクチネーション」と呼びます。


(出典:予防接種の目的と導入により期待される効果 国立感染症研究所より)

世界的基準を参考にする限り、日本でも今後ユニバーサルワクチネーションへの動きがみられることもあるかもしれません。

生命を守るB型肝炎の予防接種のお話ですから、関連する情報は、引き続き敏感にキャッチしていきたいものですね。

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