B型肝炎ウイルスキャリアとは。わかりやすいB型肝炎の用語解説

B型肝炎ウイルス(HBV)は、ウイルス性肝炎の原因になる代表的な肝炎ウイルスです。ほかにもA型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルスなど、生命を脅かすくらい強力な毒性を持つウイルスがあります。

潜伏期間が非常に長く、発症すると肝硬変や肝がんなど重大な肝臓病の原因となる危険性が高いHBVには、「感染」と呼ばれる状況と少しニュアンスが異なる「キャリア」という状態があります。

今回は「B型肝炎キャリア」についてお話します。キャリアの概念がわかれば、B型肝炎への理解の度合いが全然違ってきますよ!

HBV感染したら必ずキャリアになる、というわけではない

この記事では

  • 感染
  • キャリア
  • 無症候性キャリア
  • 不顕性感染

といったややこしいそれぞれの状態について、できるだけわかりやすく解説していきますね。

B型肝炎のウイルスや症状の状況、ウイルスによる影響など、専門的な用語はかなりややこしいです。どんな状態であり、ほかの用語との違いは何なのか、などなどお話していきましょう。

B型肝炎ウイルスに感染した・・・さて「感染」とはどういった状態?

たとえば幼いお子さんから「感染てなに?」と問われたら、みなさんならどう返答するでしょうか?

医学的な意味で用いられる「感染」の用語の意味は、さまざまな要因で外部からウイルス、細菌、アレルギー原因物質(アレルゲン)などの病原菌が体内に侵入し、身体に悪影響を与える可能性がある状態を指します。

病原体の感染により引き起こされる悪影響(症状)を「感染症」と呼びます。B型肝炎ウイルスの感染では、B型肝炎ウイルスが肝炎、肝硬変、肝がんなどの感染症の原因となる病原体です。

B型肝炎ウイルスは非常に感染力が強く、感染経路が多様なので、肝炎ウイルスの中では比較的感染しやすいウイルスであるといえます。

B型・C型肝炎ウイルスの感染経路イラスト
(出典:B型・C型肝炎ウイルスの感染経路-肝炎ウイルスの伝染経路(株式会社特殊免疫研究所)より)

▼感染経路についてはこちらで詳しく説明しています。
B型肝炎の感染経路は母子感染がほとんど。女性のB型キャリアは要注意

おそらくここまではなんとなくイメージしやすいと思います。

「B型肝炎キャリア」とはHBVの感染者であり、身体に影響が出る可能性が高い状態

B型肝炎キャリアとは、HBVを体内に保持している、いわゆる「保菌者」のことです。

当然HBVが上図のような感染経路で感染した人だけが、B型肝炎キャリアになってしまう危険にさらされることになります。

ということは、「HBVが感染すればすでにウイルスが体内に侵入しているわけだから、その時点でその人はキャリアなのでは?」と考える人もいると思います。

しかし冒頭でもふれたとおり、感染とキャリアは別です。

キャリアとは、感染してウイルスが一定以上に増殖し、身体に悪影響を与える危険性が極めて高い状態を指します。ですから、感染しただけではキャリアとはいえないのです。

感染してもキャリアとは限りませんが、キャリアであれば感染者に分類されます。そのため、一定以上の保菌を経たキャリアのことを「持続性感染」と呼びます。持続性感染とキャリアはほぼ同義です。

これはHBVに限った話ではなく、ウイルス全般で同様に定義されます。

キャリアなのに症状があらわれない状態「無症候性キャリア」

ところが、キャリアでありながらも、症状がまったくあらわれないこともあります。このケースでは、単なるキャリアとは異なる解釈がなされます。

キャリアでありながらも症状がまったくあらわれない状況を、「無症候性キャリア」と呼びます。

B型肝炎ウイルスなりほかのウイルスなりが感染しキャリアとなるわけですが、不幸にも肝炎などの感染症が現れることもあれば、症状があらわれない無症候性キャリアとなることもあります。

「感染」や「キャリア」の説明に関していえば、これでおしまいです。

無症候性キャリアに至るより前に抗体によってHBVが排除された状態の「不顕性感染」

感染しても発症しない状況「無症候性キャリア」。

ここで、なぜ感染症があらわれる人とあらわれない無症候性キャリアとに分かれることがあるのかが不思議に感じられるかもしれません。

実は、キャリアとなるか無症候性キャリアとなるかの間には、HBVに対する免疫(抗体)であるHBs抗体の有無が関係しています。

成人の多くはHBs抗体を体内に持っています。

結果として、HBVに感染したとしても、HBs抗体によってウイルスが体外に排除されるため、感染症としての症状が現れないことが多いのです。

▼HBs抗体について詳しくはこちらで解説しています。
【HBV抗原・抗体】血液検査でみるHBsはB型肝炎感染の有無をみる

無症候性キャリアに至るはるか手前で抗体によってHBVが排除され、症状があらわれない状況を「不顕性感染(ふけんせいかんせん)」と呼びます。

万一成人にHBV感染が起こったとしても、HBs抗体の有効性から不顕性感染で事なきを得ることが多いです。

中には一過性の急性肝炎を発症することもありますが、首尾よく治療すれば大きな問題には至りません。

問題は、HBs抗体を持っていない人です。それは主に母子感染(垂直感染)によって母親からHBVを受け継いだ赤ちゃんです。赤ちゃんでなくても、家族感染などにより幼少期にHBV感染すると危険度は増します。

赤ちゃんを含めて幼少期にHBV感染が起こると、HBs抗体を保持していないため、HBVが体外に排出されず、体内で増殖します。

しかしHBVには長い潜伏期間がありますので、すぐに発症しないことが多いです。

この「HBVが感染し、増殖しながら発症はしない期間」のことを、無症候性キャリアと呼ぶのです。

なお、「キャリア」ということばは「無症候性キャリア」のことを略して指すことがあります。さらに、(無症候性)キャリアの状態にある人のことを「キャリア」と呼ぶこともあります。

お医者さんはプロですから、ついつい専門的なことばを用い、こちらとしてはどこかで聞いたことがあるためにわかったような気持ちになってしまうこともあります。それが意外な落とし穴になることもあります。

目に見えないウイルスの感染に関するお話なので、それぞれの用語をイメージとしてとらえていただければと思います。

誤解を招かないためにも用語の整理は重要!わからなければどんどん質問して

お医者さんは毎日毎時、同じような症状に悩む患者さんに同じような話をし続けています。

最近のお医者さんは、基本的には懇切丁寧に説明してくれます。ただ、やはり繰り返しの説明を好むお医者さんは少ないです。

ですから、B型肝炎ウイルスのように、やや専門性の高い用語に関しては、ある程度ことばの定義をしっかりと認識しておくことも重要であるといえるでしょう。もちろんほかの病気でも同様です。

診察の際に、お医者さんが難しいことばをつかってこちらが理解できなかったとしたら、どんどん質問してもらっても問題ありません。今のお医者さんは丁寧に解説してくれます。

さらに関連する情報を提供してくれたり、有効な予防方法、改善方法、症状の緩和方法なども教えてくれることもあります。ときどき「お、よく研究してるんだな!」とほめてもらえることもあります。

ですから、用語を正しく理解したりわからないことを質問したりするのは、プラスは多くてもマイナスになることはありませんよ。

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