B型肝炎の感染経路は母子感染がほとんど。女性のB型キャリアは要注意

肝炎は、肝細胞の破壊が広がり、肝臓が炎症を起こす肝臓病です。肝炎にも複数の種類がありますが、中でも最も多いのが肝炎ウイルスと呼ばれるウイルスが感染して起こる感染症です。

この手の感染症を「ウイルス性肝炎」と呼びます。さらにウイルス性肝炎にもA型肝炎、C型肝炎など複数の種類がありますが、そのうちC型肝炎と並び代表的な肝炎であるとされるのがB型肝炎です。

今回は「B型肝炎の感染経路」についてお話します。

B型肝炎ウイルスの感染経路は血液感染

B型肝炎の感染経路の種類は「血液感染」です。血液どうしの接触というと少々わかりづらいかもしれませんが、接触によってB型肝炎キャリアの血液が自身の血管内に入り込むことで感染が起こります。

ですからB型肝炎に感染した肉や魚介類を食べたからB型肝炎になりました、などという可能性は限りなくゼロに近いことになります。

では具体的に、B型肝炎の血液感染とはどういった感染なのかについて考えましょう。

B型肝炎の感染経路は水平感染と垂直感染の2種類

日本におけるウイルス性肝炎というと、どうしてもB型肝炎、C型肝炎が二大肝炎のようなイメージがありますが、実はB型肝炎はC型肝炎の3分の1程度の患者数にとどまります。B型肝炎は肝炎全体の20%程度です。

しかし肝炎ウイルス感染後の感染症の脅威の大きさや、感染経路自体が非常に似通っていることから、日本ではこの両者が大きく取り上げられることになっています。

B型肝炎の感染経路は次の二つに大別されます。

  • 水平感染・・・外的な要因による血液感染
  • 垂直感染・・・母子感染による血液感染
水平感染の感染経路
  • 法整備・環境整備以後・・・性感染、ピアス穴、入れ墨、注射器使用による麻薬
  • 法整備・環境整備以前・・・整備以後の感染経路に加え、医療従事者の針刺し事故、輸血による感染など

要は、垂直感染(母子感染)以外のありとあらゆる経路で感染したケースが水平感染と定義されます。ありとあらゆる感染なのだから、当然B型肝炎の多くが水平感染なのだろう・・・と思うかもしれませんね。

しかし実際には、日本におけるB型肝炎の水平感染は、垂直感染にくらべるとその患者数はずっと少ないんです。そこにはいったいどんな事情が隠されているのでしょうか。

B型肝炎の垂直感染の複雑な事情

母子感染のみからなるB型肝炎の垂直感染よりも、母子感染以外のありとあらゆる経路から感染が起こる水平感染のほうが、その患者数がはるかに少ない背景にいったい何があるのか、検証していきましょう。

現在B型肝炎の患者数は全国で110万~140万人といわれます。その多くが垂直感染(母子感染)なのですが、一見すると少々不思議なこの傾向の背景には、次のような根拠が挙げられます。

B型肝炎の感染経路が垂直感染に偏る理由
  1. 母子感染防止策の一般化が遅れたから
  2. B型肝炎の潜伏期間が非常に長いから
  3. B型肝炎ウイルスは成人に感染しても大きな影響が現れないことが多いから

上記の1と2は垂直感染が多くなる理由であり、3は水平感染が多くならない理由です。厳密には、水平感染が多くならないのではなく、水平感染が起こっても影響が現れにくいという解釈になります。

いくら悪質なウイルスに感染しても、その症状が現れなければ病院に行くこともないわけですから、データとして感染者数の計上が行われません。つまり、見かけ上の感染者数だけが小さく計上されるのです。

水平感染によって成人がB型肝炎ウイルスに架線しても、徐々に免疫が機能し、ウイルスが体外に出てしまうことが多いです。すべてではありませんが、成人の水平感染は大きな脅威になりにくい特徴があります。

一方母子感染による感染の確率は非常に高いといわなければなりません。つまりお母さんがB型肝炎ウイルスのキャリアであったとすると、生まれた赤ちゃんも先天的なB型肝炎キャリアとなってしまう危険性が高いのです。

そのため現在では、妊娠の予定がある女性に対しB型肝炎ウイルス抗原・抗体検査が強く推奨されています。この検査の一般化が遅れたことが、垂直感染を多くしています。

しかも厄介なのが、赤ちゃんの場合、B型肝炎ウイルス抗体が成人のように十分な機能を果たさないことが多いという点です。そのため、

万一お母さんのB型肝炎ウイルス抗原が陽性(+)だったとすると、感染防止措置なしに出産すれば、生まれてきた赤ちゃんへの感染確率は100%で、8割~9割がそのままB型肝炎キャリアになります。

ただ、幸いにもお母さんのB型肝炎ウイルス抗原が陰性(-)だった場合、感染防止措置なしに出産したときでも赤ちゃんへの感染確率は10%程度にとどまり、赤ちゃんがキャリアになることもほぼありません。

しかもB型肝炎ウイルスは、20年、30年くらいなら当たり前に潜伏していますので、肝炎の症状が現れてから、つまりはウイルスが暴れだしてからの対処となることが多いのです。

垂直感染の場合、成人になってから自然にウイルスが駆除されることは多くありません。つまり、悪化してからの対処(治療)が余儀なくされてしまいます。このことも垂直感染が多くなる原因です。

以上から、垂直感染が非常に起こりやすいことがご理解いただけるかと思います。なかなか複雑な事情だったかとは思いますが、妊娠を予定される女性はよくご理解いただきたいと思います。

赤ちゃんにとって、お母さんとはまさに「運命共同体」であるとお考えください。妊娠予定があれば、早めにB型肝炎ウイルス抗原・抗体検査を受けるようにしましょう。

なお、万一B型肝炎ウイルス抗原+の判定だったとしても、しっかりと感染防止措置を実施すれば、赤ちゃんへの感染危険度はほぼゼロになります。防止措置についての詳細は、各医療機関にお問い合わせください。

新しい生命にもかかわるからこそ理解してほしいB型肝炎ウイルスの感染経路

成人になってからの外的な接触によるB型肝炎ウイルスの感染は、ある程度自己責任と考えられる部分もあります。しかし成人が感染しても、抗体のおかげで健康被害が大きくなりにくいというのはやや皮肉な話です。

しかし垂直感染ともなると、事情は一変します。一般論や精神論としてではなく、B型肝炎の危険が赤ちゃんにまでおよぶかもしれないという観点で、お母さんの責任は重大なのです。

だからこそ、今回の「B型肝炎の感染経路」という少々難しく感じられるテーマも、積極的なスタンスで十分に理解していただきたいと思います。

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