【アルブミン】血液検査で数値が低いのは肝臓疾患の心配があるかも
よく、「高たんぱく低脂肪の食事を心がけましょう」などという話を耳にしますが、たんぱく質という物質は、それだけ私たちの健康にとって重要な物質なんですね。
その重要な物質である「たんぱく質」の1つに「アルブミン」という物質があります。
このアルブミン、肝臓とのかかわりが密接です。今回はアルブミンをテーマに、血液検査の数値でわかることなどを中心にお話しします。
アルブミンとは何か?アルブミンの重要な働きを知る!
おそらく聞いたことがないという人はほとんどいないと思われる反面、アルブミンを正しく理解して詳しく説明できる人となると、お医者さんや科学者でもない限り、ほとんどいないと思います。
しかしこの肝臓生成物は、私たちが健康に暮らす上で非常に重要な役割を担っており、肝機能の低下によりアルブミンの生成・分泌に異常が起こるとたいへんなことになってしまいます。
実に全体重の0.2%以上がアルブミン!アルブミンの正体
アルブミンというのは、ひとことでいえば「たんぱく質の一種」です。そうはいっても、たんぱく質には非常にたくさんの種類があり、しかもこのアルブミンが人体のたんぱく質の多くを占めることから、その重要性は無視できません。
人体にあるたんぱく質のすべてをひとまとめにして「総たんぱく」と呼びます。少し詳細な血液検査したことがある人なら、総たんぱく数が検査項目に含まれるのをご覧になったかと思います。
アルブミンは、総たんぱくの約67%を占める、主にアミノ酸(600個ほど)を原料としてつくられるたんぱく質の一種であることが知られています。アルブミンも少し詳細な血液検査の項目に含まれることがあります。
主に血中に存在していますが、血液の約半分に相当する血漿(しょう)のたんぱく質成分のうち、6割程度をこのアルブミンが占めています。体重との比較だと、実に全体重の0.2%以上がアルブミンに相当します。
ものすごい種類の構成物で構成される人体ですから、「血中に100g、全体で200g」の数字からアルブミンの重要性もなんとなくイメージできると思います。ただし計算はあくまでも「見積もり」です。
これだけ重要なたんぱく質であるアルブミンの生成・分泌が低下すると、正常に機能しなくなることは明らかです。ではその機能にはいったいどういった働きが含まれるのか、これについても知らなければなりません。
だからこそ重要!アルブミンの働きを知ろう!
アルブミンの主な働きは、血中にいて、血液や体液の濃度を一定に保つ役割を担うことです。アルブミンには、「ほかの物質と結合しやすい」という性質があります。
この性質が私たちの健康を維持する上で非常に重要な意味を持ちます。たとえば、血中の必要な物質とくっついて筋肉細胞や皮膚細胞まで運搬する働きが挙げられます。
また、血中の毒素と結合してこれを排除する上でもアルブミンは重要な役割を担います。
この時点で、もしアルブミンが足りなくなってしまったら、どうやら間違いなく私たちの身体で何か不吉なことが起こりそうだという想像はつきますよね・・・
アルブミンが不足するとどうなる?そしてなぜ不足が起こる?
飲酒や不摂生、薬物など、さまざまな原因で肝機能が低下すると、肝臓はアルブミンの生成をストップします。肝臓がアルブミンの生成を放棄して、血中のアルブミン値が低下した状態を「低アルブミン血症」と呼びます。
低アルブミン血症で見られる症状は?
低アルブミン血症では、時として重篤な症状になります。
- 低アルブミン血症で見られる症状
-
- 核黄疸・・・主に海馬へのビリルビン沈着による脳神経障害の原因となる黄疸(おうだん)で、新生児に多くみられる「新生児低アルブミン血症」のリスクが比較的高い
- 全身のむくみ・・・血液濃度のバランスが崩れて浸透圧の低下によって起こる
- 床ずれ(褥瘡・じょくそう)・・・アルブミン低下により、特に寝たきりのお年寄りに見られる
アルブミン値が低下すると、新生児や寝たきりのお年寄りなど、抵抗力が低いところに重い症状が現れやすいといえます。床ずれは、そのイメージ以上につらく重篤な症状です。
低アルブミン血症によって床ずれが起こりやすくなる傾向は、アルブミンが皮膚細胞に影響を与えていることを暗に示しているといえるでしょう。
低アルブミン血症が起こる原因は?
肝機能の低下が原因で起こる症状(一般に肝機能障害・肝疾患と呼ばれる)は、本来肝臓でつくられなければならない生成物がつくられなくなっていることが直接的な原因になります。
たとえばAST(GOT)、ALT(GPT)、γGTPなどはその典型です。ただしこれらは、肝臓以外の臓器でも生成されます。これに対してアルブミンは、肝臓以外の臓器で生成されることはありません。
つまり肝機能が低下することによって、低アルブミン血症の発症リスクが非常に高くなると考えられます。また、低アルブミン血症は生成されないことだけでなく、その消費が過剰になることにも原因が求められます。
実際に症例がある、あるいは考えられる低アルブミン血症の原因を以下にまとめます。
アルブミンが生成されなくなる原因 | アルブミン消費が過剰になる原因 |
---|---|
消化不良、栄養失調、重度急性肝炎、肝硬変など | ネフローゼ症候群(尿中に漏れ出す)、たんぱく漏出性胃腸症(消化液に漏れ出す)、重度熱傷(皮膚への浸出液へ漏れ出す)、重症感染症、発熱、甲状腺機能亢進症、悪性腫瘍(がん)、胸水・腹水を伴う疾患、むくみ、重度な日焼けなど |
上記疾患のうち、たとえばがんは、新たな血管を自らつくって周辺細胞が必要な栄養を根こそぎ自分のほうに導きよせるという特徴がありますが、アルブミンは真っ先にそのターゲットになるとする説もあります。
一説では、がんになっても助かる人とそうでない人の差が、アルブミン値の推移によって影響を受けるともされます。もちろん、アルブミンの減少を最小限にとどめることで、生存率は上昇すると考えられます。
とはいえがん疾患による病態は非常に多様なので、その予後についてはアルブミンがすべてではありません。ただ、ひとつの参考としては有力な場合もあるかもしれませんね。
アルブミン値の正常値は?万一アルブミン値が低いときはどうする?
検査方法、あるいは医療機関の担当医の解釈のしかたによっても違いますが、アルブミン値のいちおうの正常値範囲が設定されています。アルブミンの場合、総たんぱく数との比較も重要な意味を持ちます。
アルブミンの正常値を知ろう!
まずはアルブミンの正常値からです。総たんぱく数との比較もそうですが、グロブリンと呼ばれる物質の総数との血清比率も基準値の判定に採用されることがあります。
- 総たんぱく数・アルブミンの基準値
-
- 総たんぱく数・・・6.7~8.3g/dL
- アルブミン・・・3.8~5.3g/dL
特にアルブミン値が3.5g/dLを下回るケースを低アルブミン血症と呼びます。ただし上記以外にも、アルブミン(A)÷グロブリン(G)で求められる「A/G比」から判定することもあります。
グロブリンの詳細についてはここで触れることまでしませんが、A/G比の基準値は次のようになります。
1.0≦A/G≦2.0,A≧4.0g/dL
低アルブミン血症への対処方法は?
上記に挙げた低アルブミン血症のリスク因子がある場合、これを改善することでアルブミン値が回復する可能性は十分考えられます。とはいえ、上記疾患のなかにはそう簡単に対処できないものも多いですよね。
もちろん上記の疾患の治療と同時並行ということになりますが、低アルブミン血症ならびにその諸症状への対処が別途講じられることが多いです。以下にまとめます。
- 低アルブミン血症とその症状(特にむくみ)への対処方法
-
- 安静
- 塩分摂取の制限
- 水分摂取の制限
- 利尿剤による強制排尿
- (1~4の対処で不十分な場合)高張アルブミン製剤の投与
低アルブミン血症の原因となる疾患によっては胸水や腹水を伴うこともありますが、特に腹水の場合、数リットルにも及ぶ重篤な症状も考えられます。その場合は上記以外の「水抜き」の対処が必要になります。
その場合、お腹に直接注射針を刺して注射器で水を抜く「腹水穿刺(ふくすいせんし)」という方法です。この場合にも、急激な水分減少による影響を緩和するために、高張アルブミン製剤を投与することがあります。
まあさすがに腹水穿刺ともなると、低アルブミン血症への対処はもちろんですが、お腹にたまった水の重みや圧迫による苦しみを緩和することにも重要な意味があります。
低アルブミン血症を予防するために肝機能のケアを!
肝機能と低アルブミン血症との関連は、アルブミンが肝臓でしか生成されないという意味で密接ですが、どちらかといえば、肝臓さえ健全を保てていれば、アルブミンの心配はさほど必要がないといえます。
AST(GOT)、ALT(GPT)、ATPなどは、肝臓以外にもいろいろな原因で数値上昇のリスクがありますが、アルブミンは肝疾患・肝機能障害だけがリスク因子です。肝臓とのかかわりが密接ではありますが、逆にケアはしやすいはずです。
心配なのは新生児や寝たきりのお年寄りなど、抵抗する力が小さい人たちのほうかもしれませんが、こればかりはアルブミンに限ったことではないので、基本は肝機能の管理に万全を期すことが重要となります。
アルブミンは、一般の血液検査では検査項目に含まれないことが多いと思いますが、まずは一般の血液検査の肝機能をこまめにチェックすることをおすすめします。