【アミラーゼ】基準値と、高い低いでわかる肝臓の異常
肝臓は、ほかの臓器から運ばれてきたさまざまな栄養素や毒素を、つぎの臓器で都合よくつかえるように代謝や解毒を行う臓器です。
そのため、肝臓に問題が起こると関係する臓器の不調の原因になります。
逆に、関連する臓器の不調により肝臓に問題が生じた結果、ほかのさまざまな臓器の問題へと派生してしまうこともあります。肝臓がいろいろな意味で重要視される背景にはそんな事情があるのです。
肝臓と関連が深い臓器はいくつかありますが、すい臓もその1つです。すい臓といえば、血糖値の上昇を抑えるインスリンを思い出す人も多いと思いますが、実はアミラーゼという重要な物質もすい臓で分泌されます。
ここではすい臓や肝臓などとのかかわりを交えて、アミラーゼについてお話します。
消化酵素として重要な働きを担うアミラーゼ。肝疾患マーカーとしても有能
アミラーゼというとおそらく中学の理科で学習した内容の復習になるかと思いますが、肝臓酵素のように代謝や解毒を担当するのではなく、デンプン(糖質)を分解する上で重要な消化酵素です。
アミラーゼは、すい臓だけでなくだ液腺からも分泌される消化酵素なので、一見肝臓とは無関係のように感じられるかもしれませんが、実は、肝疾患のリスクを示す有効なマーカーとしての役割も果たすんです。
肝機能障害によってアミラーゼ値は上昇する
アミラーゼは主にすい臓から分泌される消化酵素ですから、当然すい臓に何らかの問題が生じた場合に高値を示すことが多いです。中にはすい炎やすい臓がんなどといった重篤なすい臓疾患も含まれます。
一方、肝臓のトラブルが原因でもアミラーゼ値に異常がみられることがあります。肝臓のトラブルといっても非常に多くのトラブルが考えられますが、アミラーゼがマーカーとして機能するトラブルは多くありません。
アミラーゼ値に異常がみられる肝疾患は主に、胆石症と肝硬変です。胆石症の場合、肝疾患に分類されるのは厳密にいえば肝内結石だけですが、ほかの胆石症でもアミラーゼ値に反映されることが多いです。
ただしここで注意が必要なのは、肝疾患に伴うアミラーゼ値は、必ずしも高値異常とは限らないという点です。胆石症ではアミラーゼ値が上昇し、肝硬変ではアミラーゼ値が低値異常を示します。
特に、総胆管(そうたんかん=肝臓と、胆のう、十二指腸を経由してすい臓を貫通する、胆汁が流れる管)に石が入り込んで胆汁の流れが悪化することにより、アミラーゼ値が顕著な上昇を見せることがあります。
肝硬変ではアミラーゼが低値異常を示します。代表的なすい臓疾患である「糖尿病」でアミラーゼ値は低値異常を示しますが、肝硬変が原因で糖尿病を発症した場合、たいていアミラーゼ値はかなりの低値を示します。
ただし、肝硬変以外の肝疾患では、アミラーゼが高値を示すことがありますので、この点には注意が必要です。
アミラーゼの基準値を知ってすい臓疾患や肝疾患のリスクを知る
主にすい臓の細胞が破壊されることにより、血中に過剰なアミラーゼが測定され、異常が発覚することが多いです。
逆に肝硬変の場合は、すい臓が正しくアミラーゼを分泌しなくなり、低値になります。
アミラーゼ値の検査方法には、
- 血清から検出する「血清アミラーゼ」
- 尿から検出する「尿アミラーゼ」
という2種類があります。もちろんそれぞれに正常範囲が設定されています。
- アミラーゼの正常範囲(※)
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- 血清アミラーゼ・・・60~250IU/L
- 尿アミラーゼ・・・100~1000IU/L
※医療機関によって正常の数値解釈が異なることがあります。
アミラーゼ値の異常と推測されるリスクおよびその対処
ここまでは、アミラーゼ値の異常による肝疾患のリスクについてお話してきましたが、なんといってもアミラーゼと密接にかかわるのはすい臓であり、また腎臓などいろいろな部位のトラブルの可能性が考えられます。
そこで、上記検査の結果アミラーゼ値に異常が認められた際に起こりうるさまざまな疾患のリスクを以下にまとめておきましょう。
アミラーゼ値の異常の際に推測されるリスクは?
すい臓や肝臓だけでなく、腎臓や胃、十二指腸など、トラブルが起こりうるエリアが非常に広いのが、アミラーゼ値異常の特徴です。以下の疾患のリスクを示唆するマーカーとなりますので、要注意です。
▼アミラーゼ値に異常がみられた際に考えられる疾患
血清アミラーゼ値・尿アミラーゼ値ともに高値 | 急性すい炎、慢性すい炎の増悪期、すい臓がん、膵嚢胞(すいのうほう)、耳下腺炎(じかせんえん)、胃・十二指腸潰瘍、腹膜炎、腸閉塞(ちょうへいそく)など |
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血清値のみ高値 | マクロアミラーゼ血症、腎不全、高だ液腺型アミラーゼ血症など |
血清・尿ともに低値 | 腎臓病(腎不全など終末期腎疾患)、肝硬変、重度の糖尿病など |
疾患によっては重篤を極めるケースも考えられますので、万一アミラーゼ値に異常がみられた場合には、正しい対処が必要になります。
アミラーゼ値に異常がみられた場合の対処は?
比較的重篤な疾患の可能性を示唆するのがアミラーゼ値異常なので、ある日突然重篤な疾患になりました・・・などというケースは多くないでしょう。
ですから検査をした病院からの打診にしたがって対処することが大切です。
- アミラーゼ値に異常がみられた場合の対処
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- 数値異常の原因となっている疾患をとにかく治療する
- 精密検査(明確な疾患が特定できない場合)・・・、エラスターゼ、リパーゼなどの酵素検査、腹部超音波検査、腹部CT検査、逆行性膵胆管造影、腹部血管造影、腫瘍マーカーなどの検査
「明確な疾患が特定できない場合」というのは、明確な数値異常ではなく、継続的な軽度高値がみられる場合などに当てはまります。この場合、数値異常の原因特定のための精密検査(上記)が必要になります。
肝臓もすい臓も大事!アルコールには要注意!
上記の想定疾患からもお分かりかと思いますが、アミラーゼ値の異常は、すい臓や肝臓、腎臓など主要な臓器に重い疾患が隠されているというサインの場合があります。
特にすい臓と肝臓に問題がある可能性が高いです。すい臓にしても肝臓にしても、アルコールからの悪い影響を受けやすい代表的な臓器なので、万一アミラーゼ値に異常が見られたら、お酒の飲みすぎには十分注意してください。
どの臓器も大事ですが、すい臓も肝臓も私たちの健康を考える上ではほんとうに大切な臓器です。お酒はおいしいですが、そうした臓器に負担をかけすぎないよう、十分ご注意いただきたいと思います。