【ALP】高いと危ない!?血液検査のALP数値が示す肝臓の危険

血液検査をすると、AST(GPT)やALT(GOT)、γGTP(γ:ガンマ)など、肝機能を示す数値がわかることが多いです。もっと肝機能の詳細について知りたいときなど、検査の種類によっては肝機能の状態を詳しく知ることができます。

その1つの検査項目(肝機能値)に、ALPがあります。今回はこのALPをテーマとしてお話しします。

ALPも肝臓でつくられる重要な酵素!その特徴を知ろう!

一般的に、通常の血液検査で知ることができる肝機能の状態を示す数値は3つ、AST(GOT)、ALT(GPT)、そしてγGTPです。肝機能関連の数値は他にもたくさんあるのに、なぜかこの3つが重視されます。

検査によってはALP値など、さまざまな肝機能値を知ることができますが、基本は上記の3項目です。しかしこれは特に、上記3項目がALP値他の肝機能関連の数値よりも重要であることを意味していません。

ではなぜ、ALP値などは「重視されるほう」に入れてもらえないかというと、その理由は実に簡単、ちょっとした血液検査では簡単に知ることができない(知ることができても大きな意味を持たない)からです。

ALPはすぐに血中には入り込まない!

詳細についてはのちほどお話ししますが、ALPはγGTPと似通った肝臓酵素です。それであるにもかかわらず、γGTPと同じような手順で検知できない理由は、ALPは血中に流れ込むまでに時間がかかるからです。

つまりALPが血中に流れ込んだ時点では、「沈黙の臓器」と呼ばれる肝臓もさすがに黙っていないくらい事態が悪化している可能性が高いのです。これが、AST(GOT)、ALT(GPT)、γGTPと同じように検知できない理由です。

もちろん肝臓の状況が悪化を極め、黄疸(おうだん)が出るような事態になれば、ALPも血中から検出されます。しかしALPがそこに至るまでのプロセスは、「肝臓(肝細胞)→胆汁→十二指腸→血中」となるのが一般的です。

このプロセスで、たとえば胆石や結石、腫瘍などによって胆汁の流れが止まってしまったときにだけ、ALPは血中に流れ込みます。胆汁の流れが停止すれば、ほぼ例外なく黄疸を発します。

ですから、黄疸を伴うレベルの体調不良がキッカケで血液検査をすれば、ALPの数値が上昇していることがわかります。しかしそれ以外の状況では、ALP値は血中に既存の分しか検出されないんです。

ただし、肝臓以外の病気が原因でALP値が上昇することも珍しくありません。特に骨の異常によってALP値が上昇するケースは十分に考えられます。そういうケースでは、黄疸は見られません。

黄疸が見られるときには、ALPだけでなく、ほかの肝機能値にも異常が見られるのがふつうです。骨の異常では、ALP以外の数値には特に影響を与えないことが多いです。

重要な酵素ALPの役割と特徴を知る

順番が前後してしまった感もありますが、そろそろALPの素性について触れておかないと、「そもそもALPって何モノなのよ?」とお叱りを受けてしまうかもしれませんね。

ALPは、「Alkaline Phosphatase=アルカリホスファターゼ」の頭文字2+1文字を採用した検査項目および物質の略称です。AST(GOT)、ALT(GPT)、γGTPと並び、代表的な肝臓酵素です。

主に肝臓で分泌される酵素で、γGTPと似た働きがあるというところまでお話しました。確かに似てはいるのですが、γGTPとは酵素として働きかける対象が異なります。

すなわち、γGTPは主に、AST(GOT)、ALT(GPT)とともに「たんぱく質」に働きかけるのに対し、ALPは、アルカリ性の環境でリン酸化合物を分解します。リン酸化合物は主に、乳製品やレバーに多く含まれます。

ALPは肝臓以外にも骨や小腸粘膜、胎盤などでも比較的多く分泌される酵素です。上で「骨の異常によりALPが検知されることがある」とお話ししたのも納得できるかと思います。

特に、成長期のお子さんの骨の異常の際には、ALPの上昇がよく見られますので、親御さんは注意してあげてください。

ALP値はなぜ上昇する?どのくらい上昇すると危険なの?

ALP値が上昇するメカニズムについても、その概要についてはすでにお話ししています。AST(GOT)、ALT(GPT)、γGTPに関しては、肝細胞が破壊されてそこから漏れだした各酵素が血中に流れ込みます。

しかしALPの場合、上記の3つの酵素とは異なり、胆汁から血管内に流れ込むイメージになります。

上記3酵素、そしてALPも含む肝臓酵素は、酵素としての機能を担う以外にも、病気のマーカーとしての重要な役割も担います。そのためALPが3酵素に比べて検出しづらいことは、必ずしもデメリットではありません。

ALPが特殊な検出のされ方をすることで、病気へのマーカーとしての役割が際立つようになるからです。では、ALP値の上昇によってわかる疾患は何か・・・重要なのはこの部分です。

そのためにも、ALPの正常範囲を知っておく必要があります。ALPについては検査の方法が多様なので、いくつかの検査方法に分けることにします。

ALPの基準値(※)
  • JCSS法・・・100~325IU/L
  • P‐NP法・・・58~200IU/L
  • キンド・キング法・・・3.0~10.0KAU
  • ベッシーローリー法・・・0.8~2.9BLU

※注意・・・基準値、正常範囲の解釈は各医療機関によって異なることがあります。単位の説明に関しては、ここでは割愛しますので、詳細は担当医や検査機関に問い合わせてください。

一般の血液検査では項目に挙げられないことが多いため、ALP自体が特殊な検査のようなイメージも正直あります。実際にはそんなことはないのですが、ただ、検査方法はどれが一般的ということも一概には言えません。

ALP値上昇のリスク因子!こういうときにALP値は上昇する!

ここまでのお話しから、肝機能障害や骨、小腸、胎盤などの異常によりALP値が上昇しやすいというところまでご理解いただけたかと思います。

もっといえば、ALP値は胆汁の流れがストップしたときに大きく上昇すると考えられます。そういう状況(これを「胆汁うっ滞」と呼びます)が及ぶリスクについて、またそれ以外のリスクについても一旦まとめます。

ALP値の動向 黄疸を伴う高頻度リスク因子 黄疸を伴わない高頻度リスク因子 可能性を否定できない(低頻度)リスク因子
低値 家族性低ホスファターゼ血症、亜鉛欠乏
正常範囲内 体質性黄疸、溶血性黄疸 健康(肝機能に異常なし)、脂肪肝 慢性肝炎、肝繊維症、肝硬変、肝癌(がん)、特発性門脈圧亢進(もんみゃくあつこうしん)症
軽度上昇(正常範囲上限の2倍程度) 急性肝炎(ウイルス性肝炎)、薬剤性肝障害(肝細胞障害型)、うっ血性疾患 慢性肝炎、肝硬変、甲状腺機能亢進症、骨折、原発性肝癌、慢性腎不全 脂肪肝、肝や骨の初期病変
中等度上昇(正常範囲上限の2~4倍程度) アルコール性肝炎、薬剤性肝障害(胆汁うっ帯型) 副甲状腺機能亢進症、くる病、成長期、妊娠、原発性肝癌 高度上昇をきたす疾患
高度上昇(正常範囲上限の4倍以上) 閉塞性黄疸(胆石、結石、腫瘍などに起因)、胆道感染症、先天性胆道疾患 局性肝病変(転移性肝癌、肉芽腫(にくげしゅ)、膿瘍(のうしゅ))、ページェット病、転移性骨腫瘍(乳癌、前立腺癌)、骨肉腫、ALP産生腫瘍(泌尿生殖器癌、肺癌、肝癌) 肝炎(肝内胆汁うっ帯型)、家族性高ホスファターぜ血症

上記は少々専門用語が多くなってしまったので、大幅に簡略化するなら以下のように解釈できるかと思います。ALP上昇リスクの種類とAST(GOT)、ALT(GPT)の動向と比較しておきます。

ALP値上昇リスクの種類 ALP値上昇の程度 AST(GOT)値ならびにALT(GPT)値の動向
胆汁うっ滞 大幅に上昇 それほど大きな上昇は見られない
肝疾患・肝機能障害、その他先天・後天的疾患 胆汁うっ滞ほど大幅な上昇はない 特に肝疾患・肝機能障害では大幅に上昇

以上からもおわかりいただけるかと思いますが、ALP値の上昇は、AST(GOT)、ALT(GPT)、γGTPで疑われる疾患をさらに精査して疾患を特定する際に有効なマーカーであるといえます。

血液検査で肝機能に異常があったら早めに検査を!

お酒を飲む人であれば、γGTPに異常をきたしやすいですし、肥満、メタボ気味の人であれば、AST(GOT)、ALP(GPT)が上昇しやすい傾向にあることは事実です。

そのため、血液検査で少々肝機能に乱れが見られたとしても、問診や体重測定などから、「ちょっとお酒を控えましょうね」とか「食生活に気を付けてダイエットしましょうね」という程度の注意喚起に終わることもあります。

しかしその時点ですでに肝機能は低下がみられていて、その原因は「肝細胞の破壊」にあることは間違いありません。ですから、「・・・しましょうね」というお医者さんのことば以上に警戒しておくべきです。

特に、お酒もほとんど飲まないし、肥満、メタボとも無縁であるにもかかわらず、AST(GOT)、ALT(GPT)、γGTPの値のいずれかが高いという人は、ALP他の肝機能検査をしたほうがよいといえるかもしれません。

その意味では、飲酒習慣や生活習慣に少々の問題があって、お医者さんから「気をつけましょうね」程度に優しく諭された程度だったとしても、ALPなど詳細な肝機能検査をしてみてもよいかもしれませんね。

とにかく肝臓は、大切な臓器でありながら自覚症状に乏しいという特徴があるので、こまめにケアしてあげることが重要です。今回のテーマがこのことを再確認する機会になってくれたなら幸いです。

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