【A/G比】血液検査で低いと言われたらどんな病気が疑われるのか

肝臓は、物理的な意味で「最大の臓器」です。それゆえ肝臓の調子が悪い(肝機能値が高い)といっても、肝臓のすべてが悪いというわけでは必ずしもありません。

臓器が大きいということは、それだけ多くの細胞が肝臓を構成していることにもなります。つまり「ダメージを負う細胞が多い臓器」とも言えます。もっといえば「病気になりやすい臓器」でもあります。

ですから「肝機能検査」といっても検査項目は非常に多いです。また、数多くの仕事をこなす臓器だけに、個々の数値だけでは詳細な状況が判断できない場合もあります。

そんなときに役立つのが、「数値の比」を新たな検査項目とした「A/G比(エージーひ)」です。

A/G比がわかるといろいろなことがわかる!

一般的に肝機能の関する数値がひとつわかると、その数値と直接的、間接的にかかわる情報だけがわかります。たとえばγGTP(γ:ガンマ)の数値が高いと「アルコール性脂肪肝」の疑いがあるといった具合です。

A/G比についてもそれはほぼ同様ですが、アルブミンだけ、グロブリンだけからでもいろいろ情報がわかるわけですから、AとGというふたつの情報を含むだけに、通常よりも多くの情報を得ることができます。

ところでAとGは何を表しているのかが気になりますよね。Aはアルブミン(Albumen)、Gはグロブリン(Globulin)をそれぞれ表しています。

アルブミンの詳細についてはこちらをご覧ください。
【アルブミン】血液検査で数値が低いのは肝臓疾患の心配があるかも

グロブリンについては簡単に説明しましょう。グロブリンもアルブミン同様たんぱく質の一種ですが、その種類は非常に豊富です。種類が豊富な上、肝臓だけでつくられる物質でもないので、さまざまなトラブルで値は比較的大きく変化します。

A/G比の値の獲得方法と基準値を知る

A/G比というくらいですから、A/G比は「A÷G」の比の値をとります。肝機能検査(血液検査)をすれば、アルブミン値とグロブリン値がわかりますので、その比の値を採用したものです。

ほかの検査値がそうであるように、A/G比にも値の正常範囲が設定されています。ただし、A/G比はアルブミン値、グロブリン値によって決まる比の値なので、アルブミン値、グロブリン値のどちらか一方の基準値も重視されます。

一般的には、アルブミン値とA/G比のそれぞれの基準値が設定されており、そのどちらもが基準範囲にあることで「正常」と判断されます。少なくとも一方が基準範囲からはずれている場合は「異常」です。

アルブミン値、グロブリン値、A/G比のいずれも異常な場合とどれか1つだけが異常な場合、2つが異常な場合では、起こっているトラブルの質がそれぞれ異なる可能性が極めて高く、現状の分析が重要になってきます。

A/G比とアルブミン値の基準範囲(※)
  • アルブミン・・・4.0g/dL以上
  • A/G比・・・1.0~2.0

※注意・・・医療機関によって正常値の解釈が異なることもある

一般的に、肝機能値は基準範囲を上回ることで異常が確認されることが多いです。しかし上の基準範囲からもわかるとおり、アルブミンだけは4.0mg/dLを下回ったときに異常であると判断されます。

ちなみに「(原発性)マクログロブリン血症」は、多発性骨髄腫の一種であり、こちらも血液の成分異常が起こる重篤な疾患です。

A/G比とアルブミン値からわかる情報はどんなこと?

アルブミンは肝臓でしか生成されないたんぱく質なので、肝機能障害などが原因で本来生成・分泌されなければならないアルブミンが正しく生成されないと、アルブミン値が基準範囲を下回る異常が起こります。

このとき、グロブリン値によってA/G比も高い自由度で変化しますが、グロブリン値が正常でアルブミンだけが低いときには、A/G比が基準範囲を下回る(A/G比<1.0)こともあります。

A/G比の異常によって疑われる疾患は多様ですが、ほとんどA/G比の低下がみられます。γグロブリンが分泌されない、あるいは分泌量が著しく低い特殊な「γグロブリン血症」によって超高値になることがまれにあります。

γグロブリンは、「免疫グロブリン」と呼ばれ、免疫のなかでも最大級の働きをこなします。IgG、IgA、IgM、IgD、IgEの5種類あるというと、ピンとくる方もいると思います。

A/G比が低値を示すケースにも2パターン考えられます。

  1. アルブミン分泌量が低い、もしくはアルブミン消費が激しいパターン
  2. そしてグロブリンが異常に多く分泌されるパターン

それぞれのパターンごとに、A/G比低下が示す疾患のリスクをまとめます。

A/G比低下が示す疾患のリスク
  1. 重度肝疾患、ネフローゼ症候群、甲状腺機能亢進症、蛋白漏出(たんぱくろうしゅつ)性胃腸症、吸収不良症候群、栄養不良(過度なダイエットや極端な偏食)
  2. 膠原病(こうげんびょう)、多発性骨髄腫、マクログロブリン血症、肝炎・肝硬変、感染症

など

ネフローゼ症候群は、膠原病(特に全身性エリテマトーデス)と関係が深い腎疾患ですが、そうした重度な疾患から過度のダイエットなど日常的なトラブルまで、幅広いリスクに対するマーカーとなりえるのがA/G比の特徴です。

A/G比に異常が見られたら幅広いリスクに対応できる準備を!

A/G比のマーカーとしてのメリットは、上記のように幅広いトラブルの可能性を示唆しうることです。反面、あまりにもリスクの幅が広いことから、疾患の特定が簡単ではないことがデメリットです。

しかし、A/G比のメリットを十分生かし、異常発覚後いろいろな検査を施すことによって、デメリットをメリットに転じることができます。もちろん1回の血液検査からいろいろな項目を参照して疾患を絞り込むことはできます。

A/G比異常のリスクには、膠原病・ネフローゼ症候群、多発性骨髄腫などの重篤な、生命の危険を伴うレベルの疾患も含まれます。だからこそ、A/G比に異常がみられた時には、そうしたリスクに対応できる心の準備が必要です。

そのきっかけにするためにも、肝機能検査の際にはぜひ今後A/G比の数値にも、たまには注目してみていただきたいと思います。

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