亜鉛の効果はお酒好きにはかかせない。でもサプリメントには注意!

ミネラルをしっかり摂ることが、健康のためにも大切なことはよく知られているでしょう。カルシウムや鉄の摂取については、心がけている人が多いと思います。

それらに比べると亜鉛は忘れられがちですが、これも生きるためには重要なミネラルです。

亜鉛が不足すると味覚障害が起きたり、傷の治りが悪くなったりします。そしてアルコールの分解にも亜鉛は深く関係しているのです。

普段からお酒をよく飲む人は、亜鉛のことをもっと意識してみてください。

亜鉛は200種類以上もの酵素の構成成分!食事で摂る必要がある

亜鉛は体内に約2g存在する、必須微量元素です。全体重に比べるとごく微量しか存在していませんが、亜鉛がなくては健康な日々を送ることができません。体内で作ることはできないため、食事などから摂取する必要があります。

主に筋肉、骨、皮膚、肝臓、腎臓、脳などに分布していて、男性の場合には前立腺にも多くなります。

そして亜鉛は、酵素の構成成分としていろいろな代謝になくてはならない存在です。

体内では常にたくさんの反応が行われています。それによって栄養素が分解されたり、エネルギーが作られたりしています。酵素はこれらの反応の触媒となるもので、酵素がなくてはその反応が進みません。

亜鉛は200種類以上もの酵素の構成成分として体内のいろいろな反応に関係し、細胞の新陳代謝を助ける役割などをしています。亜鉛がなくては反応が進まないのです。

新陳代謝の盛んな細胞には、亜鉛が多く存在しています。

亜鉛の作用・効果効能は人体にとって非常に重要

亜鉛は酵素の構成成分になったりすることで、いろいろと重要な働きをしています。亜鉛があることで細胞の新陳代謝がしっかり行われ、脳や体は正常に発育していくことができます。

亜鉛の主な働きには、次のようなものがあります。

  • DNAやRNAの合成
  • タンパク質の合成
  • 味覚の機能を正常に保つ
  • 傷の治りをはやくする
  • 子供の発育・成長に関与
  • 免疫機能を正常に保つ
  • アルコールの分解
  • 性ホルモン、甲状腺ホルモンの生成
  • 活性酸素の除去
  • 視力の維持や耳鳴りの改善
  • 皮膚や髪の毛の健康を維持
  • 精神を安定させる など

このように亜鉛にはいろいろな働きがあります。亜鉛が不足すると、風邪が治りにくくなったり、脱毛しやすくなります。うつ状態になりやすくなり、記憶力が低下することもあります。インスリンの分泌やコレステロールの代謝などにも関係しています。

いくつかの働きについて、詳しく説明します。

味覚の機能を正常に保つ

亜鉛が不足すると、まず現れやすい症状が味覚障害になります。「何を食べても味がしない、ご飯がまずい」と感じるようになり、食欲がなくなってしまうこともあります。

食事をしたとき味を感じるのは、舌の上の「味蕾」にある「味細胞」のおかげです。味細胞が食べ物(の味物質)を感知すると、それが電気信号になって大脳の味覚中枢へと伝わり、そして味を感じます。

味蕾の味細胞の寿命はとても短く、10日ほどです。短い周期で次々と生まれ変わっていて、亜鉛はこの生まれ変わりを助けています。亜鉛が十分にあることで味細胞はスムーズに生まれ変わることができ、味覚を正常に保てるのです。

味覚が正常で味を満足に感じられることは、食事の重要なポイントです。おいしいと感じられないと食欲が落ちてしまいますし、その結果必要な栄養を摂ることができなくなりさらに亜鉛不足に陥ってしまいます。

傷の治りをはやくする

亜鉛は傷ついた細胞や組織の回復にも関係します。タンパク質の合成を促したりコラーゲンの合成にも関わっていて、それらの働きにより傷の治りをはやくする働きがあります。

亜鉛不足になると、傷は治りにくくなります。寝たきりの高齢者は食が細くなっている影響で亜鉛が不足し、床ずれが治りにくいこともあります。

高齢者になると食事量が減るために亜鉛が不足し、そのため味覚障害になって食事が美味しく感じられなくなり食欲が落ち、さらに亜鉛が不足して床ずれなどが治りにくいという悪循環に陥ってしまうことがあります。

発育・成長を助ける働き

亜鉛は成長期の子供にとっても重要になります。成長期は細胞の新陳代謝が活発に行われている時期です。この時期に亜鉛が不足すると細胞がうまく生まれ変わって成長していけないのです。そして骨の成長にも亜鉛が必要になります。

この時期に亜鉛が不足すると、成長が遅れてしまうことがわかっています。

お酒好きには亜鉛が大切!

亜鉛には実に様々な働きがあります。そしてお酒好きの人にぜひ覚えておいていただきたいことは、アルコールを分解するときにも亜鉛が必要になるということです。

お酒を飲むと、肝臓が一生懸命に働いてアルコールを分解してくれます。体に入ったアルコールは肝臓で分解され、やがて水と二酸化炭素になって体の外へと排出されていくのです。

肝臓の中で、アルコールは「アルコール脱水素酵素」によって分解されアセトアルデヒドになります。実は亜鉛は、この酵素の構成成分になっています。

そのため亜鉛が不足するとこの酵素が十分に働かなくなり、アルコールの分解が滞ることになってしまいます。

お酒を飲む人は、普段から亜鉛がたくさん使われてしまっています。また食事をしっかり摂っていないことも多いため、亜鉛の摂取量が少なくなってしまっているかもしれません。

このようなことからお酒をよく飲む人は亜鉛不足になってしまっている可能性があります。亜鉛は全身の健康に深く関わっていますから、一度生活を見直してみてください。

亜鉛は特に牡蠣に豊富に含まれる。亜鉛が多く含まれる食べ物とは

食事によって体内に入った亜鉛は、小腸で吸収されて肝臓へ運ばれます。吸収率はあまり良くなく、約30%くらいになります。摂取量によっても吸収率は変わり、同時に鉄や銅を摂取していると吸収率は落ちてしまいます。

亜鉛が多く含まれる食品は次のようなものです。

  • 牡蠣
  • カニ缶
  • 煮干し
  • 豚レバー
  • 牛肉
  • 卵黄
  • 小麦胚芽
  • 大豆製品
  • ゴマ
  • カシューナッツ など

亜鉛が特に豊富に含まれる食品は、なんと言っても牡蠣になります。その他の魚介類や肉類にも多く含まれています。大豆製品やナッツ類にも多くなっています。

米やパンにも含まれていて、日本人の場合はこれらの穀類から摂取することが多くなります。欧米では動物食品から摂っていることが多いようです。

加工食品には、亜鉛の吸収を妨げる添加物が使われていることがあります。そのため加工食品に頼った食事や外食が多くなると、亜鉛が不足しやすくなってしまいます。

また偏食が多かったりダイエットのために食事量を減らしていたりすると、亜鉛の摂取量が減ってしまいます。食事をしっかりしないままお酒を飲んでいる人も、亜鉛が不足しがちです。注意してください。

妊婦や授乳婦では、亜鉛を少し多めに摂るように意識する必要があります。亜鉛は赤ちゃんや胎児の発育のためにも必要になるのです。

サプリメントでの摂取で注意したい点

亜鉛はサプリメントで摂取することもでき、摂取目安量を守って飲む分には安全とされています。ただし普段の食事からある程度摂取できている場合には、サプリメントを摂ることで過剰になってしまうこともあります。

亜鉛が不足しているかもしれないと思ったときには、まずは食事を見直してみてください。そして牡蠣のような亜鉛を多く含む食品を取り入れてみてください。通常の食品から一時的に過剰に摂ってしまっても、すぐに健康被害が出ることはありません。

サプリメントなどから継続して過剰に摂取してしまうと、頭痛や吐き気、倦怠感などが出ることがあります。そして鉄や銅の吸収が悪くなってしまい、鉄不足、銅不足になってしまうこともあります。その結果、貧血になってしまったりします。

栄養素の摂取には、全てにおいてバランスが重要です。不足していそうだからと集中して摂るのではなく、食生活全体を見直してみるようにしてください。

亜鉛はビタミンCと一緒に摂ることで吸収率が上がります。牡蠣にレモンをかけて食べるのは、非常に効率のよい亜鉛の摂取方法と言えるでしょう。なお、食物繊維の過剰摂取は亜鉛の吸収率を下げてしまいます。

肝硬変患者は亜鉛が不足状態!主治医に相談して摂取しましょう

肝硬変になると、せっかく亜鉛を摂取しても排泄される量が増えてしまいます。また吸収率が健康なときよりも低下していて、そのうえ食事量が減るために摂取量も低下してしまいます。

このようなことから、肝硬変患者は亜鉛不足の状態になっているとされます。そして亜鉛不足になると肝臓の線維化が進みやすくなると考えられ、病気がさらに悪化しやすい状態になってきます。

また亜鉛不足になると窒素代謝異常が起きて、有害なアンモニアが増えてしまうとされます。アンモニアが増えると肝性脳症という症状が現れ、意識障害が出てしまいます。その他にも、亜鉛不足により免疫力が低下してしまったりします。

このように肝硬変になると亜鉛が不足し、そのためにいろいろな悪影響が出てしまうことがわかってきました。そのため、肝硬変患者に亜鉛を補充するような治療も行われています。亜鉛を補充することで、症状の改善がみられたと報告もあります。

ただしこの場合には、自己判断で亜鉛を摂ったりするのではなく、主治医に一度相談をするようにしてみてください。

亜鉛を多く含む牡蠣やレバーには、鉄も多く含まれます。肝硬変患者は鉄の摂取が制限されていることもあるため、これらの食品を摂り過ぎると別の問題が起きてしまうことになります。絶対に止めてください。

このように亜鉛は、体内のいろいろなところで働いている重要なミネラルです。アルコールの分解のためにも必要なミネラルですから、お酒をよく飲む人は普段から意識的に摂るようにしておきましょう。

もちろん、お酒の飲み過ぎはよくありません。適量で抑えるようにし、たまには休肝日も作るようにしましょう。そして食事はバランスよく食べることが一番大切だということも、忘れないでください。

亜鉛が不足しないようにすれば、お酒を飲んでよいということではありません。あくまでお酒は適量で、休肝日も作りましょう。
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