A型肝炎の予防接種を受けた方がいい人の特徴。渡航先と食べ物に注意

A型肝炎ウイルスはB型肝炎やC型肝炎などと同じく「肝炎ウイルス」と呼ばれ、感染すると重篤な肝炎を起こすおそれがある、非常に怖いウイルスです。

B型肝炎やC型肝炎の多くのような慢性肝炎とは異なり、急性肝炎を起こし、場合によっては劇症化して死を招くこともあるくらい危険なウイルスです。

怖いからこそ有効なのが、「予防接種」ですね。今回はA型肝炎の予防接種をテーマとしてお話します。

感染したら一大事!?A型肝炎の予防接種を受けるべき人の特徴

A型肝炎の予防接種は国が義務付けているわけではありません。ですから「あれ、私はA型肝炎ワクチンを接種した記憶がないんだけど・・・」と心配になってしまった方も、大丈夫なんです。

しかしながら「予防接種を受けておいたほうがよい人」がいることも事実です。これはA型肝炎の感染経路とも大いに関係しています。

予防接種を受けておいたほうがよい人
  • 中国、インド、東南アジア諸国、中東諸国、南アフリカ諸国、南米諸国、カリブ海諸国(いわゆる日本を含めた先進国以外の全世界)に渡航予定がある人
  • カキなど魚介類の生食を著しく好む人

逆に、下に示すエリア(黄色いエリア)から帰国した人は、帰国の段階で予防接種するのでは意味がありませんが、「A型肝炎ウイルス感染の検査」を実施すると安心できますよね。

A型肝炎の感染リスクのある国
(出典:厚生労働省検疫所「FORTH」|お役立ち情報|感染症についての情報|A型肝炎より)

A型肝炎ウイルスは、経口感染(A型肝炎ウイルスを持ったヒトや動物などの糞便が口に入ったり、食べ物や飲み物の飲食によりウイルスが体内に侵入したりする感染)によって感染することが多いです。

しかしまれにA型肝炎患者やキャリアとの接触(看病や性的接触など)から感染する可能性もありますので、特に感染症医療従事者やパートナーがちょくちょく海外に出かける人も予防接種を受けたほうがよいかもしれませんね。

A型肝炎ウイルスは、日本のように衛生環境レベルが高い国には多くないという特徴があります。そのため日本人の場合、特に60歳未満の人はA型肝炎ウイルスに対する抗体を持っていない可能性が高いです。

それゆえ特に60歳未満の人で、上記の「予防接種を受けたほうがよい(かもしれない)人」に当てはまったら、念のため予防接種を受けることを視野に入れておいたほうが安心といえば安心でしょう。

もちろん60歳以上の人が必ず抗体を持っているというわけでもありませんので、上記に「当てはまる人」でA型肝炎ウイルスに不安を抱いている人は、年齢にかかわらずワクチン接種をしていただきたいと思います。

A型肝炎の予防接種の概要。国内産と輸入ワクチンについて

ここまでお読みいただいて、「A型肝炎の予防接種は受けたほうがよさそう」と感じた人もいると思います。しかし日本ではあまりなじみのないA型肝炎の予防接種がどういったものであるのか知らないのも不安でしょう。

A型肝炎ワクチンを接種するかどうか迷っている人は、その概要を知ることで「受ける!」という方向に傾くかもしれませんので、その概要について簡単にお話しておきましょうね。

A型肝炎ワクチンは国内産のものと輸入されたものと2種類あります。ここでは国産ワクチンについて説明します。予防接種の目的は、特に変わったことではなく、一般的なワクチン同様「抗体をつくる」ことです。

ワクチン接種の回数 3回
接種の方法 初回接種後、2~4週間以内に2回目、6~24か月以内に3回目の接種
抗体持続期間 3回接種後5年間

国内産A型ワクチンの接種方法図
(出典:国内産A型ワクチン-医療法人社団佳有会品川イーストクリニックトラベルクリニック渡航者センターより)

かなり長期間を要して3回の接種というとかなり面倒な印象も正直ありますが、3回接種後は5年間抗体が持続するということで、ちょうど5年用パスポートと同じ期間ですから、ちょうどいいといえばいえますかね。

しかし実際には、2回目の接種ののち約2週間程度で抗体がつくられはじめますので、最短なら2週間で予防接種の有効性が発揮されることになります。とはいえ、無論3回接種したあとのほうが確実ではあります。

ですからより確実な予防接種の有効性を期待するなら、最短で半年必要ということになってしまいます。一方輸入のA型ワクチンは、もう少し小回りが利くというか、有効性の発揮が多少早いです。

ちなみに輸入ワクチンはHavrixというワクチンなのですが、

  • 1回接種後2週間経過ののちに効果を発揮し1年間持続
  • 初回接種後6~12カ月の間に追加接種すると抗体は15年持続

といった特徴があります。

急な海外出張が決まってその後もちょくちょく海外出張があることがわかっている人にとっては有効なワクチンといえそうですね。

ほかにも輸入ワクチンには

  • A型、B型混合ワクチン
  • A型、腸チフス混合ワクチン

など、いろいろな種類があります。

(医療法人社団佳有会品川イーストクリニックトラベルクリニック渡航者センターより)

保険適用の有無なども含め、詳細については予防接種を検討している医療機関にお問い合わせいただきたいと思います。

万一の備えにA型肝炎の予防接種をしましょう!

「備えあればうれいなし」などと昔から言われますが、予防接種は「備え」の典型ともいえます。A型肝炎はB型、C型肝炎のように慢性化して肝硬変や肝がんへの移行がない分怖いイメージはないかもしれません。

しかしA型肝炎は急性症状ですから、悪化して劇症肝炎を起こしたりすると、非常に厳しい状況を強いられるといわなければなりません。だからこそ「備え」が必要と考えるのはむしろ自然です。

そもそも「肝炎」ですから、肝炎ウイルスのタイプによらず、予防できるのであれば予防しておいたほうがよいに決まっていますよね。それだけにA型肝炎のリスクが想定される立場の人には予防接種が推奨されるのです。

これまでA型肝炎の予防接種を受けてこなかった人も、今後のために一度検討してみていただきたいと思います。

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