病院でうけるA型肝炎の検査。上昇する数値はどれ?

B型肝炎、C型肝炎など、ウイルス性肝炎でははっきりした症状があらわれるまでにかなりの時間がかかることが多いです。「時間」というより「歳月」といったほうがピンとくるレベルです。

しかし同じウイルス性肝炎の中でも、A型肝炎に関しては、比較的早く症状があらわれます。これはA型肝炎が急性肝炎と呼ばれることからイメージしやすいですよね。

ということは、それだけA型肝炎の検査が大切だということです。今回のテーマは「A型肝炎の検査」です。

A型肝炎の検査は症状があらわれていないと受けられない

A型肝炎ウイルスは、肝炎ウイルス中では比較的早く症状を引き起こすウイルスです。A型肝炎の急性症状は風邪のような症状ですが、症状があらわれればその時点で検査を受けることができます。

逆に、「最近A型肝炎がはやっているみたいだけど、心配だから検査したい」と考えたとしても、症状が出ていない時点では検査を実施することができません。この点は、B型肝炎やC型肝炎とは大きく異なる点です。

A型肝炎の検査「A型肝炎抗体検査」の概要

同じウイルス性肝炎でも、その検査の方法は若干異なります。A型肝炎の場合、A型肝炎ウイルスの感染が疑われる症状に対して「A型肝炎抗体検査」と呼ばれる検査を実施します。

A型肝炎は症状が出る前に確実な検査をすることができない検査です。A型肝炎の感染のリスクに直面している人にとって、これは明らかなデメリットです。しかし別にイジワルをしているわけではありません。

「抗体検査」は血中の抗体を確認する検査ですから、抗体ができるまでの時間を加味しなければならないのです。つまり、A型肝炎抗体検査は抗体ができるのを待って、これを確認する検査になります。

その時間が、「症状が出るまでの時間」に近いと解釈すれば、イジワルでも検査システムの不備でもなんでもないことが理解できますよね。

A型肝炎抗体検査対象者
  • 40歳以上の方
  • 途上国に長期間滞在した経験が過去にある方
  • 過去に肝炎などによる黄疸(おうだん)の症状を経験したことがある方

(参考:想定されるA型肝炎抗体(免疫)検査対象者-海外赴任者のための感染症対策(一般財団法人海外邦人医療基金)より)

途上国に長期滞在した経験がある人は、特に熱帯・亜熱帯地域の国ではA型肝炎ウイルスに感染するリスクが高まります。A型肝炎の感染経路は「経口感染」ですから、食べ物から感染する可能性が高いです。

A型肝炎の感染経路については、こちらの記事で詳しく解説しています。

「黄疸」は白目や皮膚の一部に黄変がみられる肝臓病特有の症状です。ただ、A型肝炎抗体検査の対象となる人に該当するのは、現在ではなく「過去に黄疸の経験がある人」です。

実はA型肝炎の急性症状の場合、黄疸がみられることは少ないです。当然みられることもあります。ときおり劇症化することもありますが、劇症化したり急性症状を放置したりすると、A型肝炎でも黄疸がみられます。

過去に黄疸が出ているということは、A型肝炎を含め、肝炎などの肝障害を経験したことを意味します。それがウイルス性肝炎による黄疸だったとすると、すでに当該肝炎ウイルスの抗体を持っている可能性が高いです。

それが果たしてどのタイプの肝炎ウイルスであったのかを知ることによって、A型肝炎抗体の有無を判断する重要な材料になります。

肝機能検査でわかるA型肝炎。上昇する数値とは

A型肝炎ウイルスに感染すると、肝機能検査(血液検査)でわかる肝機能値が上昇する傾向があります。風邪のような体調不良を感じ、A型肝炎の危険も同時に感じている人は、肝機能検査を実施してみてください。

A型肝炎ウイルスに感染すると、肝機能検査や詳細な血液検査・膠質(こうしつ)検査などにより、ほかのウイルス性急性肝炎にくらべて次の数値が上昇することが多いです。

  • ALT(GPT)
  • AST(GOT)
  • ALP
  • LDH
  • IgM抗体(免疫グロブリン)
  • TTT

(参考:臨床症状-A型肝炎とは(NIID国立感染症研究所)より)

まずは肝機能検査でALT(GPT)、AST(GOT)の数値を見て、明らかな上昇があれば、詳細な血液検査や膠質検査でさらに詳細な数値を確認したほうがよいかもしれません。

A型肝炎ウイルスに感染しているかどうかを知るためには、ここまでお話してきた「A型肝炎抗体検査」を受ける必要があります。しかしご覧のとおり、A型肝炎抗体検査は「症状が出てから受ける検査」です。

何らかの事情で「A型肝炎に感染したかもしれない」という「ウイルスの脅威」に対する検査は、症状が出てから、すなわちつらい思いをしてからでなければ実施されないのが現状です。

肝炎ウイルスに限らず検査の意義は2つあって、それは

  • すでに感染しているウイルスによる影響(病状、進行レベル)を知ることができる
  • ウイルスに感染しているかどうかを知ることができる

という意義です。しかしA型肝炎抗体検査は、症状がない状態で感染の有無を確認することができないのです。要は、不安の払拭という「検査の意義」を欠いているのです。あえて言わせてもらうなら。

A型肝炎の知識がない人なら特に影響しないかもしれませんが、知識がある人にとってこれはたいへんなストレスです。A型肝炎は劇症肝炎に移行する危険もあります。これはすなわち死の恐怖です。

だからこそ、A型肝炎ウイルスの感染の有無を確実に判断できるわけではないものの、肝機能検査や詳細な血液検査・膠質検査を実施して、今後あらわれるかもしれない症状に備えることは十分できるはずです。

一種のリスクマネジメントではありますが、これらはすべて自分でできることです。危険を感じているのであれば、少なくとも肝機能検査はぜひ実施していただきたいと思います。

A型肝炎の検査はまず「一般の肝機能検査」から

A型肝炎の検査を実施するまでの流れとしては、

  1. 体調が悪くて病院に行って血液検査をした
  2. 肝機能の数値が高かった
  3. 詳細な検査(膠質検査など)を実施した

という流れになると思います。3番目の「詳細な血液検査や膠質検査」の結果次第で、A型肝炎抗体検査が実施されることになるでしょう。時間の問題といえばいえてしまいます。

問診から海外滞在経験、カキを食べたといった事実があかるみに出れば、もっと早い検査になるかもしれません。いずれにしても、急性症状が出てから実施される検査となる可能性が極めて高いです。

そもそも、体調が悪くないのに検査を行うのは、定期的な健康診断くらいのものでしょう。上で少し脅かすようなことを書いてしまったかもしれませんが、症状が出てからの検査でも、そこまでの心配は不要です。

A型肝炎は、症状が出てからしっかりと治療をしさえすれば、深刻なダメージを負うことはほぼありません。ただ、まれに生命の危険に瀕した症状(劇症化)へと急変することもあるということだけは忘れるべきではありません。

つまり、急性症状を放置するべきではないということだけは忘れないでください、ということです。

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